省エネ行動シート事件(知財高裁H28-02-24 / 判タ1437号130頁 / 百選49)
省エネ行動シート事件(知財高裁H28-02-24 / 判タ1437号130頁 / 特許判例百選第5版49番)
事案
原告Xは「省エネ行動シート」について特許を出願したが,拒絶査定を受けた。それに対し,不服審判請求,及び手続補正書により特許請求の範囲を補正。この審判請求について審判請求不成立の審決(本件審決)を受け,それに対する審決取消訴訟を起こした事案である。
争点
特許法上の発明該当性(拒絶査定及び本件審決における理由付記不備を中心とする手続違背も実際には問題になったがまた別項目にて)
結果
原告の請求棄却
理由(<>内は筆者注)
特許法2条1項に規定する「発明」といえるか否かは,(前提とする技術的課題,その課題を解決するための技術的手段の構成及びその構成から導かれる効果等の技術的意義に照らし,全体として考察した結果,)自然法則を利用した技術的思想の創作に該当するといえるか否か(によって判断すべきものである。)
→
「発明」は自然法則を利用した技術的思想の創作であるところ,単なる人の精神活動,意思決定,抽象的な概念や人為的な取決めそれ自体は,自然法則とはいえず,また,自然法則を利用するものでもないから,直ちには自然法則を利用したものということはできない。<から,課題解決のために人の精神活動,意思決定,抽象的な概念や人為的な取決めそれ自体を用いるものは「自然法則」を利用したものとはいえず,「発明」とはいえない>
→(以上規範)
本願発明の技術的意義は「省エネ行動シート」という媒体に表示された,文字として認識される……を利用者である人に提示することによって,当該人が,取るべき省エネ行動と節約できる概略電力量等を把握するという,専ら人の精神活動そのものに向けられたものであるということができる。
本願発明は,その本質が専ら人の精神活動そのものに向けられているものであり,自然法則,あるいは,これを利用するものとはいえないから,全体として「自然法則を利用した技術的思想の創作」には該当しないというべきである。
→
本願発明は,特許法2条1項に規定する「発明」には該当しない。
補足
特許法2条1項の「発明」の定義は「この法律で『発明』とは,自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいう。」となっている。
ここから,①自然法則利用性,②技術的思想性,③創作性,④高度性が導かれる。高度性は実用新案法における「考案」との区別で重要となるはずであるが,実質的に出願者にその選択が委ねられており,死んだ要件である(LQ知的財産法,p29)。
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