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ピコイ事件

  東京高決平成 20 年 5 月 12 日判タ 1282 号 273 頁 事案の概要: 取締役会が違法な新株予約権無償割当を行おうとして、取締役会において決定した日を割当日として 247 条類推の差止請求を不可能にした。その状況で、新株予約権に基づいてなされる新株発行を差し止めることができるかという事案。新株予約権発行無効の判断をしないでいいのかという問題。 規範: 新株予約権発行はその行使による新株発行が当然予定される手続きであるから、新株予約権の発行について法令定款違反、不公正発行という瑕疵がある場合は、それに続く新株発行の手続きも当然その瑕疵を引き継いだものになる。 したがって、新株予約権発行手続に 247 条の差止事由がある場合、引き続いて行われる新株発行手続にも当然 210 条の差止事由があるものといえる。 本件: 被保全権利について、ブルドックソース事件とほぼ同じ。 株主平等の原則 (109 条 ) が原則であるが、会社の存立は株主共同の利益。それを害するような買収の場合に当該敵対的買収者を差別的に取り扱ったとしても、衡平の理念と相当性に照らして欠くところがなければ、直ちに株主平等の原則の趣旨に反するとはいえない。

ブルドックソース事件(最決平成19年8月7日)

注:主要目的ルールについて述べた忠実屋・いなげや事件、ニッポン放送株事件、及びブルドックソースを前提とするピコイ事件等々について、整合性の争いというか、主要目的ルール死亡説が囁かれていますが、未だ主要目的ルールは生きており、その例外としてブルドックソースのいう「株主の同意」やニッポン放送のいう「濫用目的買収者対抗」があると思っています。例外の範囲が広がっていっているようですが、あくまで答案上は主要目的ルールで原則判断をして、その後例外処理をすべきかと。 また、ブルドックソース事件は主要目的ルールを重要論点とせず、明らかに目的が買収防衛策であるにも関わらずOKとしていて、株主平等の原則に対する回答をしたものであるという視点で以下整理していますが、この点においては主要目的ルール死亡説に靡いてしまうところです。 答案としてブルドックソースがダイレクトに出た場合を想定すると、やはり主要目的ルールに触れつつ、経営判断の原則から資金調達目的を苦しくても認定した上で株主平等の原則の話に入るべきなのかと思ったり、思わなかったり。 事案の概要:買収防衛策として、株主総会の圧倒的多数により「差別的行使条件を付した新株予約権無償割当」を行い、相手方の新株予約権を行使させず金員を交付し全部取得することで、持分比率の大幅な低下を目論んだ事件 結論:合法 規範:原則として 109 株主平等の原則が妥当する。株主平等の原則は個々の株主の利益を保護するため、会社に対し、株主をその有する株式の内容及び数に応じて平等に取り扱うことを義務づけるものであるが、個々の株主の利益というものはそもそも会社の存立・発展なくしては考えられないものである。そうであれば、会社の企業価値が毀損されることにより、株主共同の利益が害されることになるような場合には、その防止の為特定の株主を差別的に取り扱うことが許される場合もある。 この判断に際しては、会社の利益の帰属主体である ①株主自身が最終的な判断(判断をしたという点を①とする) をすべきものであるところ、 ②株主総会の手続きの適正 、 ③判断の前提となった事実の存在といった判断の正当性を失わせるような部分の重大な瑕疵 が無い限り、尊重されるべきである。 本件:本件総会では ①議決権総数の 83.4% の賛成を得て可決されており、相手方以外のほとんどの...