ニレコ事件(ポイズン・ピルの適法性)
東京高決平成17年6月15日(商判Ⅰ―66事件)
用語:
ポイズン・ピル……事前に既存株主へ新株予約権を無償割当しておき、発行済議決権付き株式総数の一定以上(本件では20%)を保有する者が現れたとき、取締役会が新株予約権の消却が必要と認めない限り、新株予約権が行使され、敵対的買収者の保有割合を希釈し、現経営、及び現支配株主の支配権を維持することで、経営権簒奪から防衛することを目的として設計される企業防衛策
規範:
濫用的な買収から企業を防衛するために新株予約権を行使させ、特定株主の持株比率を低下させることは、その時点での経営者や支配権を維持することになるから、ポイズン・ピルの目的の重要なものとして支配権の維持があることは否定できない。
ところで、ポイズン・ピルが発動し、実際に新株予約権が行使されたとき、既存株主は新株予約権の行使価格がほぼ無償であることから、会社資産の増加がないのに発行済株式総数が一気に3倍<本件では1株あたり2株の割当がされていたので、3倍になる>になるのであるから、株式の時価が1/3に下落する可能性がある。とはいえ、株主としても価値は1/3となれども、3倍の量の株式を得るのであるから、実質的に損害はないといえる。しかし、そのような要素を抱えた株式として存在する以上、投資対象としての価値が薄れ、長期に渡る株価下落、低迷を招く可能性がある。これは、本件新株予約権の発行がなければ生じ得なかった不測の損害といえる。
備考:
濫用的買収から保護するために新株予約権を活用する可能性を認めたといえるニッポン放送事件同様、こちらもその可能性は認めている。一方で、それを見越して事前に仕込むポイズン・ピルは否定したものである。
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