ニッポン放送株事件


東京高決平成17323日(商判8版Ⅰ―64

事案の概要:経営権争いが起きている状況で、敵対的買収対抗策として新株予約権を第三者割当したところ、不公正発行だと争われた事件。ライブドアが元気にしてたころの話ですね。本件において敵対的買収を仕掛けているのはライブドアで、防衛しているのはニッポン放送(及びフジテレビ)です。村上ファンドも絡んでいて、法律の勉強なんて全くしていない頃ですが、印象深いですね。

結論:(抗告)棄却。ニッポン放送が負けました。

規範:原則として、主要目的ルールが妥当する。すなわち、会社の経営支配権に現に争いが生じている場面に置いて、取締役会が支配権を争う特定の株主の持ち株比率を低下させ、特定の株主や現経営者の支配権を確保することを主要目的として新株を発行することは、取締役会の一般的権限たる経営判断事項として無制限には認められない。これは、株主総会の専決事項たる(2541項、2571)取締役の選解任を経た取締役会によって、株主の構成を変更することは、商法の機関権限分配の法意に反するものであるからである。<ここまで主要目的ルールの原則論>

もっとも、経営支配権の維持確保を目的とした新株予約権の発行が許されないのは、取締役は会社の所有者たる株主の信任を基礎とするところ、株主全体の利益の保護という観点から、新株予約権の発行を正当化する「特段の事情」がある場合は、例外として許容される。この場合の特段の事情とは、①グリーンメイラー、②焦土化作戦(③会社経営を支配した後に、当該会社の資産を当該買収者やそのグループ会社等の債務の担保や弁済原資として流用する予定で株式の買収を行っている場合、④会社経営を一時的に支配して当該会社の事業に当面関係していない不動産、有価証券など高額資産等を売却等処分させ、その処分利益をもって一時的な高配当をさせるかあるいは一時的高配当による株価の急上昇の機会を狙って株式の高価売り抜けをする目的で株式買収を行っている場合<全部書いたら長いし覚えられないので、2個くらい書いておく>)など、「濫用目的をもって株式を取得」するような相手方の場合、その相手方は保護に値しない上、当該敵対的買収者の放置は他の株主の利益を損なう。

よって、対抗手段としての必要性や相当性が認められる限り、経営支配権の維持確保を主要な目的とする新株予約権の発行であっても、正当なものであるといえる。

本件:後ほどちゃんと書きますが、上記の規範に当てはめて、敵対的買収者ではあるものの、必要性と相当性不充足としました。

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