ブルドックソース事件(最決平成19年8月7日)
注:主要目的ルールについて述べた忠実屋・いなげや事件、ニッポン放送株事件、及びブルドックソースを前提とするピコイ事件等々について、整合性の争いというか、主要目的ルール死亡説が囁かれていますが、未だ主要目的ルールは生きており、その例外としてブルドックソースのいう「株主の同意」やニッポン放送のいう「濫用目的買収者対抗」があると思っています。例外の範囲が広がっていっているようですが、あくまで答案上は主要目的ルールで原則判断をして、その後例外処理をすべきかと。
また、ブルドックソース事件は主要目的ルールを重要論点とせず、明らかに目的が買収防衛策であるにも関わらずOKとしていて、株主平等の原則に対する回答をしたものであるという視点で以下整理していますが、この点においては主要目的ルール死亡説に靡いてしまうところです。
答案としてブルドックソースがダイレクトに出た場合を想定すると、やはり主要目的ルールに触れつつ、経営判断の原則から資金調達目的を苦しくても認定した上で株主平等の原則の話に入るべきなのかと思ったり、思わなかったり。
事案の概要:買収防衛策として、株主総会の圧倒的多数により「差別的行使条件を付した新株予約権無償割当」を行い、相手方の新株予約権を行使させず金員を交付し全部取得することで、持分比率の大幅な低下を目論んだ事件
結論:合法
規範:原則として109株主平等の原則が妥当する。株主平等の原則は個々の株主の利益を保護するため、会社に対し、株主をその有する株式の内容及び数に応じて平等に取り扱うことを義務づけるものであるが、個々の株主の利益というものはそもそも会社の存立・発展なくしては考えられないものである。そうであれば、会社の企業価値が毀損されることにより、株主共同の利益が害されることになるような場合には、その防止の為特定の株主を差別的に取り扱うことが許される場合もある。
この判断に際しては、会社の利益の帰属主体である①株主自身が最終的な判断(判断をしたという点を①とする)をすべきものであるところ、②株主総会の手続きの適正、③判断の前提となった事実の存在といった判断の正当性を失わせるような部分の重大な瑕疵が無い限り、尊重されるべきである。
本件:本件総会では①議決権総数の83.4%の賛成を得て可決されており、相手方以外のほとんどの既存株主が賛成したものであるから、株主の判断として相手方による買収は会社の企業価値を毀損し、株主共同の利益を害すると判断したといえる。また、②総会決議の手続きは適正に行われた。
(③また、相手方は発行済株式のすべてを取得する目的を持っていたが、投下資本の回収方針等を明らかにせず、経営方針も明らかでなかったから、正当性を失わせるような重大な瑕疵があったとはいえない)←試験レベルではここは特に拾えそうな事情が無い限り無視できそう。「その他判断の正当性を失わせるような重大な瑕疵はなく」で良いのでは。逆にそのような事情があればここを丁寧に論じるべき主戦場?
更に、手段の相当性について、相手方は取得条項に基づき対価として金員が交付され、仮に実行されない場合でも、本件新株予約権の譲渡を申し入れることで対価を得られるものであるが、その対価は相手方の算定したTOB買付価格に基づき算出されており、適正なものであるといえる。よって、本件新株予約権無償割当は、形式的に株主平等原則に反するとしても、衡平の理念に反し、相当性を欠くものとはいえない。
(なお、相手方に対価として多数の金員を支払うこと自体企業価値の既存、株主共同の利益に反するとも考えられるが、これについても相手方を除く既存株主のほとんどがその影響を含めて同意していたといえるから、この点についても判断を尊重すべきである。)←試験現場でここまで書くことがあるだろうか……?(おそらくない、思い出したら書いておいてもいいかも。印象点程度?)
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