ゴツトン師事件(教唆犯)
ゴツトン師事件 (表記ゆれでゴト師事件、ゴットン師事件とも。今回は判例の表記に従った) 所収 (最判S25/07/11_刑集4巻7号1261頁)(百Ⅰ89)(判総306) 何を言ったか 教唆において必要とされる因果性について判断を示した。 事案の要約 まず、Xの教唆(①)によってX・Y・Z他で共謀して強盗に入ろうとしたが、母屋に入れなかったので断念した。その後、諦めようとしていたところにZらが「我々はゴツトン師であるからただでは帰れない」と言い出し、隣のB商会(ラジオ屋)へ押し入った。 問題点 ①の教唆行為とB商会へ押し入った行為との間の因果関係が存在するか問題となった。 解決 ①教唆による強盗失敗後、断念した段階で一旦放棄された。その後共犯者3名が『B商会に押し入ろうと主張したことに動かされて決意を新たにして遂にこれを敢行したものであるとの事実が窺われないでもない』ので、①とB商会での行為との間に因果関係があるといえない。 メモ 教唆とは「人に犯罪行為遂行の意思を生じさせて、それに基づき犯罪を実行させること」であった。そうであれば、実行行為に対してそれを「決意させた」といえることこそが実行行為との関係での因果関係として求められる。 本件では最初の家に入っていれば問題なく①によって「犯罪行為遂行の意思を生じさせた」のであろうが、一旦断念したところで①によって生じた意思は終わった。ここで因果関係が断絶したので、Xの教唆と実行行為との因果関係はないとしたものである。